Flight126 「ペット・サウンズ」
![]() | Pet Sounds [from UK] [Import] (2000/09/04) The Beach Boys 商品詳細を見る |
『ペット・サウンズ』とは66年、アメリカのロック・バンドであるビーチ・ボーイズによって出されたアルバムです。それまで陽気で明るいサーフィン・ミュージックを量産していた彼らの新作は、あまりにも暗く儚く革新的なものでした。
『ペット・サウンズ』を作ったのはほとんどバンドのリーダーであるブライアン・ウィルソン1人といって差し支えありません。彼がビートルズの『ラバー・ソウル』に触発されて作った『ペット・サウンズ』は、レコード会社にもファンにもそして他のメンバーにさえも理解されず、ブライアンは失意の底に落ちてしまいます。そしてレコード会社からの圧力と、ブライアン自身の精神が元々あまり強くなかったことも災いし、「神に捧げるティーンエイジ・シンフォニー」をコンセプトとした幻の次作『スマイル』は流産してしまいます。
そして2004年、40年近くの時を経て遂に『スマイル』は完成しました。
そして2009年、45年近くの時を経て僕はペット・サウンズ中毒になってしまっています。
どこまでも暗く、美しい曲調。「ペット・サウンズの森」は1曲1曲進むごとに深さと暗さを増し、最終曲「Caroline No」ではすべての音が悲劇的に共鳴し、犬の咆哮と電車と共に去っていきます。
モノラルのもこもことした靄の向こうから、ブライアンが偏執的に作りこんだ音が耳に潜り込んできます。極彩色の音像が持つ触れれば壊れてしまいそうな繊細さ。革新的な技巧の数々はそれらをひけらかすのではなく、あくまで音楽をひたすら切々と鳴らすためだけに使われていて。「ペット・サウンズの森」はどこまでも深く、世界中に「ペット・サウンズ廃人」を産み出しているのにも拘らず、曲自体はどこまでもポップ。留まれるはずの無い点、存在しないはずの場所に『ペット・サウンズ』は存在しています。
このアルバムを買ったのは1年ほど前ですが、その時はまったく感動が沸きませんでした。霧を被った同じような曲が延々続く退屈なアルバムだと感じ、棚の中で埃を被っていました。そして今、秋になって久しぶりに耳に通した『ペット・サウンズ』は異様な輝きを放ち、ぞっとするような美しさをたたえて迫ってきました。「Let's Go Away For Awhile」、「God Only Knows」、「I Just Wasn't Made For These Times」は特に美しく、怖いほどです。一部、本当にごく一部分ではあれ、『ペット・サウンズ』の霧は晴れ、その素晴らしさを僕に見せてくれています。しかしまた別の部分に今までとは違った靄が立ちこめ始め、「ペット・サウンズの森」は一層深遠さを増しています。そして僕はいつまでもこの森の中を限りなく幸福な気持ちで彷徨うことになると思います。
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Flight125 「流血のダライ・ラマ、ヴィンテージズボンを穿く」
空前の大傑作、血の滲むジーパンが巻き起こす感動の嵐!
超弩級エンターテイメント大作、『流血のダライ・ラマ、ヴィンテージズボンを穿く』、待望の日本上陸!
テストの結果が次々に返ってきていますが、ここ数年でも最悪の結果でした。期末頑張ります…。
・村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を読んでいて、1巻が終わり2巻に入ったところです。村上春樹では今のところ長編では『ダンス・ダンス・ダンス』、『海辺のカフカ』、短編では『中国行きのスロウ・ボート』、『パン屋再襲撃』が好きです。
・リチャード・バックとサン=テグジュペリって相通ずるところがあるように思います。もちろん空を飛ぶ小説を書いているという以外に、という意味です。
・ゴングの10年振りの新作『2032』が出ていますね。ゴングは聴いたことがないのですがこれを機に入門してみようかな。
・最近古典のカバーに松山ケンイチとかの写真や漫画家のイラストが使われているんですけれど、これって正直どうなんですか。いや、確かに松山ケンイチが格好良いのは判りますが、彼が『変身』や『恐るべき子供たち』と一体どういった関係があるのかまったく判りません。
・マイケル・ムーアの『Roger & Me』を観ました。皮肉の塊みたいな作品です。凄く面白い。
・キング・クリムゾンの40周年記念盤に対して、正直もういいよ、出しすぎだよと思っているのは僕だけではあるまい。
・友人にクラシックと現代音楽とテクノが好きな奴がいるんですが(凄い組み合わせだな)、彼に「ピアノ曲で面白いのって何かある?」と訊いたら「メシアンの『ニワムシクイ』」との答えが。タワーレコードで探してみよう。
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超弩級エンターテイメント大作、『流血のダライ・ラマ、ヴィンテージズボンを穿く』、待望の日本上陸!
テストの結果が次々に返ってきていますが、ここ数年でも最悪の結果でした。期末頑張ります…。
・村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を読んでいて、1巻が終わり2巻に入ったところです。村上春樹では今のところ長編では『ダンス・ダンス・ダンス』、『海辺のカフカ』、短編では『中国行きのスロウ・ボート』、『パン屋再襲撃』が好きです。
・リチャード・バックとサン=テグジュペリって相通ずるところがあるように思います。もちろん空を飛ぶ小説を書いているという以外に、という意味です。
・ゴングの10年振りの新作『2032』が出ていますね。ゴングは聴いたことがないのですがこれを機に入門してみようかな。
・最近古典のカバーに松山ケンイチとかの写真や漫画家のイラストが使われているんですけれど、これって正直どうなんですか。いや、確かに松山ケンイチが格好良いのは判りますが、彼が『変身』や『恐るべき子供たち』と一体どういった関係があるのかまったく判りません。
・マイケル・ムーアの『Roger & Me』を観ました。皮肉の塊みたいな作品です。凄く面白い。
・キング・クリムゾンの40周年記念盤に対して、正直もういいよ、出しすぎだよと思っているのは僕だけではあるまい。
・友人にクラシックと現代音楽とテクノが好きな奴がいるんですが(凄い組み合わせだな)、彼に「ピアノ曲で面白いのって何かある?」と訊いたら「メシアンの『ニワムシクイ』」との答えが。タワーレコードで探してみよう。
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Flight124 「審判」
ようやくテストが終わりました。3日合わせて8時間ぐらいしか寝ていないので、泥のように眠りたいと思います。電車の中で立っていると大丈夫なのですが、座っているとほとんど失神のように意識が飛びます。
深夜用プログラム(睡眠導入剤兼)
01、Ballad Of Sir Frankie Crisp (Let It Roll) / George Harrison
02、Exit Music (For A Film) / Radiohead
03、Wish You Were Here / Pink Floyd
04、Morning Bell / Radiohead
05、Holiday / Richard Wright
06、Knives Out / Radiohead
07、Nobody Home / Pink Floyd
08、Pink's Song / Richard Wright
09、Comfortably Numb / Pink Floyd
10、Hear Me Load / George Harrison
03と04、04と05の曲間は、それぞれの始めと終わりのSEが似ているので流れに違和感を感じにくいようにしてあります。色々と苦心した結果、やはり全体に統一感を持たせようとすると、ミュージシャンが被りまくるという当然の結果が明らかになりました。というか半分がフロイドですね。
岩波から出ているカフカの短編集を買ってきて読んでいます。地理でカフカス山脈というのが出てきて、その文字列を見た瞬間、僕の頭の中では、山の斜面を10000人に増殖したフランツ・カフカがそぞろ歩いていくイメージがとめどなく溢れて大変なことになったので、これを沈静化させるにはカフカ分を摂取するしかないなと思ったからです。ちなみにそのイメージを友人Yに語ったところ、なんとも言えない表情でこっちを見てらっしゃいました。
エド・オブライエンによると、レディオヘッドが冬にスタジオ入りし、来年には新しいアルバムをリリースするそうです。個人的には初めてリアルタイムで体験するレディオヘッドになるので本当に楽しみです。
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深夜用プログラム(睡眠導入剤兼)
01、Ballad Of Sir Frankie Crisp (Let It Roll) / George Harrison
02、Exit Music (For A Film) / Radiohead
03、Wish You Were Here / Pink Floyd
04、Morning Bell / Radiohead
05、Holiday / Richard Wright
06、Knives Out / Radiohead
07、Nobody Home / Pink Floyd
08、Pink's Song / Richard Wright
09、Comfortably Numb / Pink Floyd
10、Hear Me Load / George Harrison
03と04、04と05の曲間は、それぞれの始めと終わりのSEが似ているので流れに違和感を感じにくいようにしてあります。色々と苦心した結果、やはり全体に統一感を持たせようとすると、ミュージシャンが被りまくるという当然の結果が明らかになりました。というか半分がフロイドですね。
岩波から出ているカフカの短編集を買ってきて読んでいます。地理でカフカス山脈というのが出てきて、その文字列を見た瞬間、僕の頭の中では、山の斜面を10000人に増殖したフランツ・カフカがそぞろ歩いていくイメージがとめどなく溢れて大変なことになったので、これを沈静化させるにはカフカ分を摂取するしかないなと思ったからです。ちなみにそのイメージを友人Yに語ったところ、なんとも言えない表情でこっちを見てらっしゃいました。
エド・オブライエンによると、レディオヘッドが冬にスタジオ入りし、来年には新しいアルバムをリリースするそうです。個人的には初めてリアルタイムで体験するレディオヘッドになるので本当に楽しみです。
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Flight123 「Holiday」
岡田克也も化けの皮が剥がれました。各自が危機感を持って自衛しましょう。
「尊敬する人を上から5人挙げてください」という質問をされれば、僕はジョージ・ハリスン、デヴィッド・ギルモア、スヌーピー、リチャード・ライト、村上春樹と答えると思います。
それで、そのリチャード・ライトですけれど、彼はピンク・フロイドというバンドでずっとキーボードを弾いていた人です。惜しくも去年亡くなられてしまいました。彼なくしてはフロイドの魔術のようなサウンドは出せません。残念ながらフロイドの再結成はこれで不可能になってしまいました。
彼は2枚のソロアルバム『Wet Dream』『Broken China』を出していて、特に『Wet Dream』は現在品切れ状態となっていて、僕も方々探し回っていたんですが、何と先日、ブックオフの500円コーナーで発見しました。いつもの癖で「R」の棚を目を追っていたら、「Richard Wright」の文字列を発見し、唖然とし、何度も目を擦ってようやく夢ではないことが判り、大事に抱えてレジまで直行しました。前の持ち主が丁寧に扱ってくれていたおかげで盤の状態も完璧で、しかも現在廃盤の日本盤だったのです。歌詞、対訳、ライナーノーツとすべて揃っていて、あまりのことにぼーっとしたまま帰宅しました。
実際に聴いてみると、これが予想を更に上回る出来で、ピンク・フロイドの最盛期のアルバムにも劣らない傑作。リリースされたのは1978年(『The Wall』の前年)ですが、サウンドとしては『おせっかい』辺りのもので、絶望の中にありながらも優しく包み込むような音世界が全面に広がっています。キング・クリムゾンやキャメルに参加していたメル・コリンズがサックスを吹いていて、これがしみじみとした味わいを一層深めています。それにしてもこのアルバムを聴いていると、いかにピンク・フロイドが音に対する鋭い感覚を持ったバンドかということを思い知らされます。
憂いに満ちた詩が泣かせる上、リックのとつとつとした歌声で聴かされると本当にぐっときます。特に最後のヴォーカル曲「Pink's Song」では、ピンク・フロイドに対して彼が抱いている思いが、極限まで張り詰めた切なさと美しさと共にやってきます。紛れもない最高品質のアルバムです。
高橋源一郎さんの『さようなら、ギャングたち』を読みました。ひたすら面白かったです。一冊の本をここまで夢中になって最後まで読んだのは結構久しぶりです。
ヴェルギリウスが冷蔵庫になって「詩の学校」にやってくるくだりが最高でした。他には、フロイトとユングを読みふける両親と祖父に暇さえあればロールシャッハテストの真似事をされて悩んでいる中学生も良いですね。
『ジョン・レノン対火星人』も読みました。むむむ…強烈です。
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「尊敬する人を上から5人挙げてください」という質問をされれば、僕はジョージ・ハリスン、デヴィッド・ギルモア、スヌーピー、リチャード・ライト、村上春樹と答えると思います。
それで、そのリチャード・ライトですけれど、彼はピンク・フロイドというバンドでずっとキーボードを弾いていた人です。惜しくも去年亡くなられてしまいました。彼なくしてはフロイドの魔術のようなサウンドは出せません。残念ながらフロイドの再結成はこれで不可能になってしまいました。
彼は2枚のソロアルバム『Wet Dream』『Broken China』を出していて、特に『Wet Dream』は現在品切れ状態となっていて、僕も方々探し回っていたんですが、何と先日、ブックオフの500円コーナーで発見しました。いつもの癖で「R」の棚を目を追っていたら、「Richard Wright」の文字列を発見し、唖然とし、何度も目を擦ってようやく夢ではないことが判り、大事に抱えてレジまで直行しました。前の持ち主が丁寧に扱ってくれていたおかげで盤の状態も完璧で、しかも現在廃盤の日本盤だったのです。歌詞、対訳、ライナーノーツとすべて揃っていて、あまりのことにぼーっとしたまま帰宅しました。
実際に聴いてみると、これが予想を更に上回る出来で、ピンク・フロイドの最盛期のアルバムにも劣らない傑作。リリースされたのは1978年(『The Wall』の前年)ですが、サウンドとしては『おせっかい』辺りのもので、絶望の中にありながらも優しく包み込むような音世界が全面に広がっています。キング・クリムゾンやキャメルに参加していたメル・コリンズがサックスを吹いていて、これがしみじみとした味わいを一層深めています。それにしてもこのアルバムを聴いていると、いかにピンク・フロイドが音に対する鋭い感覚を持ったバンドかということを思い知らされます。
憂いに満ちた詩が泣かせる上、リックのとつとつとした歌声で聴かされると本当にぐっときます。特に最後のヴォーカル曲「Pink's Song」では、ピンク・フロイドに対して彼が抱いている思いが、極限まで張り詰めた切なさと美しさと共にやってきます。紛れもない最高品質のアルバムです。
高橋源一郎さんの『さようなら、ギャングたち』を読みました。ひたすら面白かったです。一冊の本をここまで夢中になって最後まで読んだのは結構久しぶりです。
ヴェルギリウスが冷蔵庫になって「詩の学校」にやってくるくだりが最高でした。他には、フロイトとユングを読みふける両親と祖父に暇さえあればロールシャッハテストの真似事をされて悩んでいる中学生も良いですね。
『ジョン・レノン対火星人』も読みました。むむむ…強烈です。
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Flight122 「アルバム考察 『KID A』&『Amnesiac』」
お久しぶりです。半月近く何も書いていませんでした。訪問してくださってた方、どうも申し訳ありません。
弟は中間テスト前でピリピリしていますし(僕はその2週間後)、母もつられてピリピリしていますし、学校はインフルエンザで壊滅したため火曜日まで休み、学校が他県にあるため近所に遊べる友人がいない……とまあここまで来ると、僕は自室に引きこもってロックでも聴いてトリップするしかないのです。
こういうときのお薦めはレディオヘッド『KID A』と『Amnesiac』です。2枚で1作品なので交互に聴きましょう。
もちろん大勢の方と同じく僕も『KID A』を初めて聞いたときの印象は微妙でした。『OK Computer』で現代ロックの頂点を極めたレディオヘッドの次作が注目されるのは当然ですし、その次作こそがバンドの将来を左右する正念場といって過言ではないと思います。
ピンク・フロイドは『狂気』の大成功の後、自らの過去を振り返って、ファーストアルバム製作後に精神病によりバンドからの離脱を余儀なくされたシド・バレットへ捧げた傑作アルバム『炎』を作りました。
一方キング・クリムゾンは『クリムゾン・キングの宮殿』を作りあげた後、バンドが空中分解し、『宮殿パート2』的な『ポセイドンのめざめ』などのアルバムをリリースしますが、ロバート・フリップはなかなか『宮殿』を超えるアルバムが作れず苦しんでいます。しかし4年後の73年、ようやく起死回生の大傑作アルバム『太陽と戦慄』を作り上げました。
イーグルスは『ホテル・カリフォルニア』でアメリカン・ドリームの崩壊を歌い、もはやどうしようもなくなって最後に『ロング・ラン』を出して解散しています。
傑作を出した後のバンドが向かう先は何種類かあって、
1、一度立ち止まって自分の状況を整理する
2、前作を踏襲する
3、気にせずいつも通り我が道を行く
4、奇をてらってまったく違うことをする
5、路線を変えて自分が本当にやりたいことを追求する
6、プレッシャーに耐えかね解散する
という風に大体分けられると思います。2と3、4と5はそれぞれ似ていますがその実はまったく違うのがお判り頂けると思います。
それで結局(前置きが長すぎる)、僕は『KID A』を聴いたとき、上の「4」だと思いました。「逃げ」を打っているというあざとさを感じたのです。しかし聴き込むうちにどうやらこのアルバムはそんな底の浅いものではないようだ、と思うようになり、同じセッションから生まれた次作『Amnesiac』を聴いてすべての疑問が氷解しました。これは上の「5」だったんだと。両方のアルバムに収録されている唯一の曲「Morning Bell」に2つのアルバムの間での変化がよく判ります。
ライナーノーツに書いてある通り、これは「行き」と「帰り」のアルバムであり、『KID A』で得た方法論を消化してロックアルバム『Amnesiac』が作られたのだと思います。
理屈っぽくうだうだ書きましたが、こんなことを考えなくても2枚とも純粋に音楽的に優れた素晴らしいアルバムです。
結局21世紀になっても何も変わりはせず、何も良くならなかった00年代。しかも国連で誰かさんが立てた身勝手な目標により各家庭の光熱費が年36万円上がるという試算も出されていて、これから始まる10年代も底なしに暗い時代になることも保障されました。
本当にどうしようもない時代に生きる我々の目が、現実からそらす事を静かに制してくれるこの2枚のアルバム。現実から目を背けて刹那的な楽しみを与え、何も後には残らない幾多の娯楽とはどこまでも遠くに離れたこの2枚のアルバムのような音楽こそが、最終的に我々を救ってくれるだろうと思います。
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弟は中間テスト前でピリピリしていますし(僕はその2週間後)、母もつられてピリピリしていますし、学校はインフルエンザで壊滅したため火曜日まで休み、学校が他県にあるため近所に遊べる友人がいない……とまあここまで来ると、僕は自室に引きこもってロックでも聴いてトリップするしかないのです。
こういうときのお薦めはレディオヘッド『KID A』と『Amnesiac』です。2枚で1作品なので交互に聴きましょう。
もちろん大勢の方と同じく僕も『KID A』を初めて聞いたときの印象は微妙でした。『OK Computer』で現代ロックの頂点を極めたレディオヘッドの次作が注目されるのは当然ですし、その次作こそがバンドの将来を左右する正念場といって過言ではないと思います。
ピンク・フロイドは『狂気』の大成功の後、自らの過去を振り返って、ファーストアルバム製作後に精神病によりバンドからの離脱を余儀なくされたシド・バレットへ捧げた傑作アルバム『炎』を作りました。
一方キング・クリムゾンは『クリムゾン・キングの宮殿』を作りあげた後、バンドが空中分解し、『宮殿パート2』的な『ポセイドンのめざめ』などのアルバムをリリースしますが、ロバート・フリップはなかなか『宮殿』を超えるアルバムが作れず苦しんでいます。しかし4年後の73年、ようやく起死回生の大傑作アルバム『太陽と戦慄』を作り上げました。
イーグルスは『ホテル・カリフォルニア』でアメリカン・ドリームの崩壊を歌い、もはやどうしようもなくなって最後に『ロング・ラン』を出して解散しています。
傑作を出した後のバンドが向かう先は何種類かあって、
1、一度立ち止まって自分の状況を整理する
2、前作を踏襲する
3、気にせずいつも通り我が道を行く
4、奇をてらってまったく違うことをする
5、路線を変えて自分が本当にやりたいことを追求する
6、プレッシャーに耐えかね解散する
という風に大体分けられると思います。2と3、4と5はそれぞれ似ていますがその実はまったく違うのがお判り頂けると思います。
それで結局(前置きが長すぎる)、僕は『KID A』を聴いたとき、上の「4」だと思いました。「逃げ」を打っているというあざとさを感じたのです。しかし聴き込むうちにどうやらこのアルバムはそんな底の浅いものではないようだ、と思うようになり、同じセッションから生まれた次作『Amnesiac』を聴いてすべての疑問が氷解しました。これは上の「5」だったんだと。両方のアルバムに収録されている唯一の曲「Morning Bell」に2つのアルバムの間での変化がよく判ります。
ライナーノーツに書いてある通り、これは「行き」と「帰り」のアルバムであり、『KID A』で得た方法論を消化してロックアルバム『Amnesiac』が作られたのだと思います。
理屈っぽくうだうだ書きましたが、こんなことを考えなくても2枚とも純粋に音楽的に優れた素晴らしいアルバムです。
結局21世紀になっても何も変わりはせず、何も良くならなかった00年代。しかも国連で誰かさんが立てた身勝手な目標により各家庭の光熱費が年36万円上がるという試算も出されていて、これから始まる10年代も底なしに暗い時代になることも保障されました。
本当にどうしようもない時代に生きる我々の目が、現実からそらす事を静かに制してくれるこの2枚のアルバム。現実から目を背けて刹那的な楽しみを与え、何も後には残らない幾多の娯楽とはどこまでも遠くに離れたこの2枚のアルバムのような音楽こそが、最終的に我々を救ってくれるだろうと思います。
![]() | KID A (2000/09/27) レディオヘッド 商品詳細を見る |
![]() | アムニージアック (2001/05/30) レディオヘッド 商品詳細を見る |
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